「穴」、「墓場なき野郎ども」が映画化されて好評を博していたジョゼ・ジョヴァンニ原作の暗黒街小説「ひとり狼」の最初の映画化(2度目の映画化がジョヴァンニ自身の監督による『ラ・スクムーン』(72))。名匠ジャック・ベッケルの息子で、父の『モンパルナスの灯』(58)や『穴』(60)で助監督を務めたジャン・ベッケルの監督デビュー作である。HDリマスターによる60年ぶりの劇場公開となる。
共演はベルモンド演じる主人公ロベルト・ラ・ロッカの親友グザヴィエに『わが青春のマリアンヌ』(55)、『宿命』(57)のピエール・ヴァネック。その妹ジュヌヴィエーブに『ポンペイ最後の日』(58)、『隊長ブーリバ』(62)のクリスティーネ・カウフマン。リメイク版『ラ・スクムーン』ではグザヴィエを演じるミシェル・コンスタンタンが本作ではアメリカ人ギャング団のリーダーを演じている。他に『黙って抱いて』(58)、『顔のない眼』(59)のベアトリス・アルタリバ、『カトマンズの男』(64)、『ボルサリーノ』(70)など、ベルモンドとの共演も多いマリオ・ダヴィッド。脚本はジョヴァンニとジャン・ベッケルの共同で、ジョヴァンニは台詞も担当している。『ラ・スクムーン』と同じ物語だが、こちらの方が全体的にドライなタッチになっている。撮影は『ロシュフォールの恋人たち』(66)、『やさしい女』(69)のギスラン・クロケ。ジャン・ベッケルは本作の後、『黄金の男』(64)と『タヒチの男』(66)でもベルモンドと組むことになる。
ヌーヴェル・ヴァーグの代表作、ジャン=リュック・ゴダール監督の『勝手にしやがれ』(59)が大ヒットし、一躍トップスターの仲間入りを果たした当時29歳のベルモンドと、フランスを代表する名優として円熟期を迎えていたジャン・ギャバンという新旧2大スターが最初で最後の顔合わせをした記念碑的名作。日本では劇場未公開でテレビ放映され、幻の傑作としてファンの語り草となっていたが、製作から34年後、ギャバンの没後20周年を記念して1996年に初めて劇場公開された。今回はHDリマスター版による26年ぶりの劇場公開となる。
監督はジャン・ギャバンの代表作でもある『ヘッドライト』(55)、『地下室のメロディー』(63)の名匠で、オムニバス映画『フランス女性と恋愛』(59)の1エピソードでベルモンドを起用し、その後本作『冬の猿』(62)をはじめ、『太陽の下の10万ドル』(63)、『ダンケルク』(64)、『華麗なる大泥棒』(71)、『恐怖に襲われた街』(75)、『追悼のメロディ』(76)、“Les Morfalous”(84)というベルモンドが主演する長編7本を監督するアンリ・ヴェルヌイユ。音楽は『地下室のメロディー』、『ある晴れた朝突然に』(64)のミシェル・マーニュ。撮影は『ヘッドライト』、『地下室のメロディー』でもヴェルヌイユ監督と組んでいるルイ・パージュ。共演は『赤い風車』(52)、『太陽のならず者』(67)のシュザンヌ・フロン、『大盗賊』(61)、『波止場』(63)のノエル・ロクヴェール、『現金(げんなま)に手を出すな』(54)、『ヘッドライト』のポール・フランクールほか。
アテネを舞台に100万ドルのエメラルドをめぐり4人組の窃盗団と悪徳刑事が、激しい争奪戦を繰り広げるアクション超大作! スリリングな金庫破りシーン、アテネの街を縦横無尽に駆け巡る壮絶なカーチェイスや走る市バスを使ったアクション、砂利山からの300メートル大落下など、ベルモンドが生身で演じる驚異のアクションの連続。ジャッキー・チェン映画やアニメ「ルパン三世」などに大きな影響を与えた傑作。本作にはフランス語版と英語版があり、吹き替えではなく各々の発声で撮影は2度行なわれた。日本初公開時に上映されたオリジナルフランス語版は、その後発売されたVHSやDVD、テレビ放映された英語版よりも11分長く、エンディングの編集が違いカーアクションも多い。今回はHDリマスター化されたフランス語完全版の51年ぶりの劇場公開となる。
製作・監督・共同脚本は、『ヘッドライト』(55)、『地下室のメロディ』(63)などの名作で知られる名匠で、ベルモンドとは、『冬の猿』(62)、『ダンケルク』(64)、『恐怖に襲われた街』(75)など7本の作品でコンビを組んだアンリ・ヴェルヌイユ。原作は『ピアニストを撃て』(60)、『狼は天使の匂い』(72)のデヴィッド・グーディス。同原作は1957年に一度ポール・ウェンドコス監督、ダン・デュリエ主演の「THE BURGLARS」として映画化されている。撮影は『大いなる幻影』(37)、『007/私を愛したスパイ』(77)の名手クロード・ルノワール。音楽は『恐怖に襲われた街』、『パリ警視J』(83)でもベルモンド映画を手掛けているエンニオ・モリコーネ。カーアクションとスタント指導は『恐怖に襲われた街』、『プロフェッショナル』(81)など、ベルモンド映画のほとんどのアクションを手掛けている“カースタントの神様”レミー・ジュリアンが担当している。
共演はまるで「ルパン三世」の銭形警部のようなコート姿でベルモンドを執拗に追う刑視ザカリアに『アラビアのロレンス』(62)、『ドクトル・ジバゴ』(65)の名優オマー・シャリフ。ベルモンドとチームを組む窃盗団のラルフに『愛と哀しみのボレロ』(80)、『プロフェッショナル』(81)のロベール・オッセン、同じくレンジ-に『Z』(69)、『ル・ジタン』(75)レナート・サルヴァトーリ、紅一点のエレーヌに『ボルサリーノ』(70)、『友よ静かに死ね』(76)のニコール・カルファン。謎の女レナに『シェイマス』(72)、『シーラ号の謎』(73)ダイアン・キャノン。
『墓場なき野郎ども』(60)、『穴』(60)、『冒険者たち』(67)の原作者にして、『ル・ジタン』(75)、『父よ』(01)などの監督作としても知られる暗黒街映画の名匠ジョゼ・ジョヴァンニ。彼が、1961年にジャン・ベッケル監督が『勝負(かた)をつけろ』として映画化した自らの小説「ひとり狼」を、11年ぶりに、より原作に忠実に、スタイリッシュかつ情感たっぷりにリメイクし、ベルモンド・ファンに高い人気を誇る傑作フィルム・ノワール! HDリマスター&完全新訳による49年ぶりの劇場公開となる。
原作「ひとり狼」はジョヴァンニ自身が収監されていたベルビニヤン・サンテ刑務所で知り合った伝説のギャングをモデルにした小説で、1958年に発表された。撮影は『プレイタイム』(67)、『雨の訪問者』(70)の名手アンドレア・ヴァンダン。音楽は『冒険者たち』(67)、『さらば友よ』(68)のフランソワ・ド・ルーベ。
共演は『ビアンカ』(61)、『大盗賊』(61)に続くベルモンドとの共演となるクラウディア・カルディナーレ。同じ物語の『勝負をつけろ』ではアメリカ人ギャングを演じた『生き残った者の掟』(66)、『狼の挽歌』(70)の個性派ミシェル・コンスタンタンが、本作では友人グザヴィエを演じている。他に『ワイルド・バンチ』(69)、『ガルシアの首』(74)のエンリケ・ルセロ、『鬼火』(63)、『オー!』(68)のアラン・モッテ。また、ブレイク前のジェラール・ドパルデューがラスト近くに若いギャング役で出演している。
ベルモンドが製作を兼ねて名匠アラン・レネと初めて組み、1930年代に起きたフランス史上最大の疑獄スキャンダルの中心人物を格調高く描いた実録巨編。第27回カンヌ国際映画祭コンペティション部門でプレミア上映され、スタビスキーの支援者ラオール男爵を演じた名優シャルル・ボワイエが特別表彰を受けた。ボワイエはまた、1974年のニューヨーク映画批評家協会賞で最優秀助演男優賞も受賞している。HDリマスター&完全新訳による47年ぶりの劇場公開となる。
共演は他にスタビスキーの妻アルレットに『ボビー・デアフィールド』(77)、『小さな初恋』(78)のアニー・デュプレー、『居酒屋』(59)、『ダンケルク』(64)のフランソワ・ペリエ、『個人生活』(74)、『陽だまりの庭で』(95)のクロード・リッシュ、『夜の刑事』(69)、『片腕サイボーグ』(86)のロベルト・ビサッコ、『ジャッカルの日』(73)、『家族の灯り』(12)のマイケル・ロンズデールなど。無名時代のジェラール・ドパルデューが、スタビスキーに出資を求める若い発明家の役で出演しているのも見逃せない。
脚本はレネ監督の『戦争は終わった』(65)や『Z』(69)のホルヘ・センプラン。音楽は『ウエスト・サイド物語』(57)の作詞や『レッズ』(81)等の音楽の他、「ジプシー」「スウィーニー・トッド」など数多くのミュージカルを作曲したアメリカ音楽界の巨人スティーヴン・ソンドハイム。アニー・デュプレーの衣装を手掛けたのはイヴ・サン=ローラン。
アラン・レネは本作の原題を当初、劇中ラオール男爵とスタビスキーが最も幸福な時代だったと語るビアリッツの日々の思い出から「BIARRIZ BONHEUR」としたいと主張したが、フランスの配給会社の強い要望である「STAVISKY」に押し切られた。だが、レネはそれだけでは作品の持つ多様な要素を表現するには不十分だとして、「…」と付けることになり、正式題名は「STAVISKY…」となった。
ベルモンドが製作を兼ね、『リオの男』(64)、『カトマンズの男』(65)の名コンビ、フィリップ・ド・ブロカ監督と5度目のタッグを組んだ泥棒コメディ。アレックス・バローが1973年に発表した小説の映画化で、ベルモンドが次から次へとカメレオンのように変装し、口八丁、手八丁で人々を騙してまったく懲りない詐欺師を軽快に演じる。原題は“手に負えない奴”という意味。物語の後半、エル・グレコの三連祭壇画と世界遺産モン・サン=ミシェルが重要な役割を果たす。日本初公開以来、VHSにもなったことがない幻の快作で、HDリマスター&完全新訳による46年ぶりの劇場公開となる。
ヒロインは『パリの大泥棒』(66)でもベルモンドと共演し、ド・ブロカ監督の『まぼろしの市街戦』(67)でも可憐なヒロインを演じ、『1000日のアン』(69)でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたジュヌヴィエーヴ・ビジョルド。当時ジュヌヴィエーブは、『大地震』(74)、『愛のメモリー』(76)など、ハリウッド映画のヒロインとしても活躍しており、アイドル的人気があった。共演は他に、『Z』(69)、『ムッシュとマドモアゼル』(77)のジュリアン・ギオマール、『ムッシュとマドモアゼル』(77)、『警部』(78)のシャルル・ジェラール、『リオの男』(64)、『危険なささやき』(88)のダニエル・チェカルディ、『ピンクの豹』(63)、『サテリコン』(69)のキャプシーヌ、『相続人』(73)、『プロフェッショナル』(81)のミシェル・ボーヌといったベテラン名優揃い。
脚本はド・ブロカと『冬の猿』(62)から『プロフェッショナル』(81)まで数多くのベルモンド映画を手掛けるミシェル・オーディアール。撮影は『相続人』(73)、『恐怖に襲われた街』(75)のジョン・パンゼ。音楽は『リオの男』(64)、『大頭脳』(68)のジョルジュ・ドルリュー。劇中、あるシーンで『リオの男』のテーマ曲が流れニヤリとさせられる。
『恐怖に襲われた街』(75)、『警部』(79)に続き、ベルモンドが犯人逮捕のためなら手段を選ばぬ暴れん坊警官、警視J(ジョルダン)を体当たりで演じ、ベルモンドのポリス・アクション史上最大のヒットとなった作品。ヘリからの縄梯子につかまっての宙づりアクション、改造ムスタングが疾走するカー・チェイス、映画史上初の最強銃器ベレッタM93Rによる銃撃戦、ベルモンド・アクションのトレードマークをすべて最大スケールで揃えたベルモンド・アクションの完成形にして、スタローンやセガールが継承していく80年代“無敵のワンマンアーミー”ムービーの原点ともいうべき作品。HDリマスターによる37年ぶりの劇場公開となる。
監督は、『ボルサリーノ』(70)以来、15年ぶりのコンビとなるジャック・ドレー。ドレーは本作の後、ベルモンド最後の刑事アクションとなった『Le Solitaire』(87)も監督している。音楽は『華麗なる大泥棒』(71)、『恐怖に襲われた街』(75)、『プロフェッショナル』(81)に続くベルモンド映画となる巨匠エンニオ・モリコーネ。撮影は『エースの中のエース』(82)に続くベルモンド映画となるザヴィエ・ショワルツェンベルガー。カー・スタント指導はもちろん、ベルモンド映画のほとんどを手掛ける“カー・アクションの神様”レミー・ジュリアンの担当。出演は悪の組織のボス、メカチに『野獣捜査線』(85)、『刑事ニコ/法の死角』(88)の個性派ヘンリー・シルヴァ。同僚のロジャンスキー警視には『ジャン=ポール・ベルモンドの道化師/ドロボー・ピエロ』(80)、『プロフェッショナル』のピエール・ヴェルニエ。まだブレイク前のチェッキー・カリョがジョルダンの弟分フランシスを演じているのも見逃せない。
1933年4月9日、パリ郊外のヌイイ=シュル=セーヌに生まれる。父は著名な彫刻家ポール・ベルモンド、母も画家だった。幼い頃は病弱だったが、その後サッカーに熱中、さらにボクサーになる夢を持つスポーツマンとなった。やがて俳優を志し、コンセルヴァトワールに入学、56年に同校を優秀な成績で卒業する頃にはすでに有望な若手舞台俳優として注目を集めていた。57年の『歩いて馬で自動車で』で長編映画デビュー後、クロード・シャブロル監督の『二重の鍵』(59)で注目され、さらに同年ジャン=リュック・ゴダール監督の『勝手にしやがれ』(59)で一気にブレイクを果たし、母国での圧倒的大人気とともに、フランス・ヌーヴェル・ヴァーグの代表的スターとして国際的な知名度を得た。多くの名匠、巨匠の作品に出演する一方、売り出し中のフィリップ・ド・ブロカ監督と組んだ『大盗賊』(61)が大ヒットを記録、コメディ・タッチのエンタテインメント作品で新たな魅力が開花した。ド・ブロカ監督とはさらに冒険アクション大活劇『リオの男』(64) 、『カトマンズの男』(65)で組み、危険なアクションをスタントマンなしで自ら演じたことも話題となり世界的な大ヒットとなって“アクション・スター”ベルモンドのイメージを強烈に印象付けることになった。
65年の『気狂いピエロ』を最後にゴダール監督とは袂を分かち、ベルモンドはアクション、コメディ、ラブ・ストーリーと、エンタテインメントの王道をいく作品を中心に出演して次々と大ヒットを飛ばし、フランス映画の顔として大活躍することになった。
70年には当時フランス映画界で人気を二分していたアラン・ドロン製作、主演の『ボルサリーノ』でドロンと共演、大きな話題となって大ヒットした。72年『ジャン=ポール・ベルモンドの交換結婚』からは自ら製作会社セリト・フィルムを設立して製作業にも進出、74年にはフランス映画界で出演料が最も高い俳優となった。75年の『恐怖に襲われた街』から、80年代中盤まではハードなアクションを見せ場にした主演作を連打し、年間興行成績の上位に君臨し続けた。
88年、アクション映画卒業後のクロード・ルルーシュ監督作『ライオンと呼ばれた男』(88)では初めてセザール賞主演男優賞を受賞。さらに2011年、カンヌ国際映画祭で名誉ゴールデン・パルム賞、2016年、ヴァネチア国際映画祭で栄誉金獅子賞など、数多くの生涯功労賞を受賞している。
2度の結婚で、元F1レース・ドライバーのポール・アレクサンドル・ベルモンドなど4人の子どもがあり、孫の一人、アナベル・ベルモンドはモデル、女優として活躍中。また、ウルスラ・アンドレス、ラウラ・アントネッリといった女優とのロマンスも有名である。
香港のジャッキー・チェンやチョウ・ユンファ、日本のコミック「ルパン三世」、「コブラ」、フランス=ベルギーのグラフィック・ノベル「ブルーベリー」など、ベルモンドのファンを公にしている俳優、映画監督、作家、漫画家は世界中に数多く、ベルモンド映画の影響下にある作品も枚挙にいとまがない。
2021年9月6日、パリの自宅で死去。享年88歳。9月10日にはアンヴァリッド廃兵院でフランス政府主催による追悼式が営まれた。